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『パプーシャの黒い瞳 』──詩が貧弱なのは残念(★★★) [映画レビュー]

『パプーシャの黒い瞳』(ヨアンナ・コス=クラウゼクシシュトフ・クラウゼ監督、2013年、原題『PAPUSZA』


 


 ジプシーの歴史は悲しい。まさに「旅を住処とす」である。迫害からの自衛ゆえに、仲間うちの掟は厳しい。そこでの女性の地位は高いとはいえず、そんななかで、同じ迫害されている民族のユダヤ人のカフェ経営のおばさんから、読み書きを習う主人公、通称、パプーシャ。彼女がどんなふうに詩人になっていくかが描かれているのかと期待して見たが、詩の部分はあまり多くなく(おそらく、それほど印象的な詩はないのかもしれない)、映画のなかで発表されたものも、訳詩を通したかぎりでは、凡庸さを否めない。


 映画は時間を前後させて構成されているが、それほど効果的とも思えない。ただ、ジプシーの暮らしはよくわかった。そして、音楽を武器できることも。


 物語の中心はパプーシャを「詩人」として認め、世に出す手助けをする「よそ者」の男との愛。彼は、警官をなぐって逃亡中、友人を介して、ジプシーの群れのなかに身を隠す。二年間彼らと暮らし、パプーシャを知る。そこには愛があるのだが、その愛も、ジプシーゆえにまっとうできない。不幸なすれ違いがあるのみだった。その男は、パプーシャの詩を売り込むとともに、ジプシーについての本を出す。言ってみれば、文化人類学的方法だが、その本がジプシーの秘密を明かしたということで、パプーシャとの関係も微妙になる。モノクロの映像は美しいが、強さに欠ける作りとなったのは、残念である。


 同じモノクロ映像で「詩人」を描いた、ジャームッシュの『デッドマン』(1995年)のような神秘的なウィットがほしかった。

 


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