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『ゼロの未来 』──自己模倣地獄(★) [映画レビュー]

『ゼロの未来』(テリー・ギリアム監督、2013、原題『THE ZERO THEOREM』


 


 原題は、『THE ZERO THEOREM』で、「ゼロ定理」。「未来」などどこにもついてないが、ギリアムのヒット作、『未来世紀ブラジル』にあやかってアピールしようとした狙いが見え見えである。こんな邦題をつけなければならないのだから、本作は、それほど画期的な作と言えないことはわかっていたはずである。


 しかし、多くの客は、クリストフ・ヴァルツを目当てに映画館へおもむいたと思う。このオーストリアだかの出身のアカデミー賞俳優を、私はあまりすきではない。だから、多少SFの方に期待した。善意に解釈すれば、「ゼロ定理」とは、ビッグバン宇宙がまた無に帰していくというものだろう。しかしドラマ全体を通して、そういうものへのテーマはあやふやで、お飾りという印象もある。


 主人公、コーエンの自宅、古い教会とか、端末機械、なにかの解析装置と試験管のような器具(これがかなりアナログっぽいが(笑))、ユーザーインターフェイス化された「ブロック」の画像(数式が決まらないと崩れる)、投げられたピザを穴から取りに来るネズミ(これだけはおもしろかった(笑))等、ディテールで引きつけようとしたのかもしれないが、それも、すでに既視感ありすぎの世界である。


 未来というなら、「いつの」未来なのか? たとえば、『2001年宇宙の旅』は、「1968年の未来」だったし、『ブレードランナー』は、「1982年の未来」だった。そういう意味では、本作が真剣に、「2013年の未来」を想像しているとも思えない。


 企業が社員の精神的健康のために、端末に送り込んでくるバーチャル精神科医。あの出っ歯のオバサン、チルダ・スウィントンに似てるなと思ったら、やっぱりそうだった(笑)。同じ2013年に制作された、『スノーピアーサー』に出てくる変なオバサンと顔がそっくりなのである。あのときは、よく化けたと思ったが、今回似たようなのを見ると、案外「素顔に近いのかな?」(笑)と思ってしまう。ギリアム自身も、ポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』に対抗したのか? 確かにギリアムの方が知名度がある。しかし、本作は、近未来の恐怖を描いた『スノーピアサー』の足もとにも及ばない。もし、少しでも及びたかったなら、せめて、主役を、『スノーピアサー』のクリス・エヴァンスのような若くていい男にすべきだったのかもしれない。スキンヘッドのアーリア系オッサンじゃあ、悪いけど、まったく感情移入も同情もできない(笑)。


 


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