SSブログ

『パレードへようこそ 』──日本人に完全に欠けているもの(★★★★★) [映画レビュー]

『パレードへようこそ』(マシュー・ウォーチャス監督。2014年、原題『PRIDE』)

 

イギリスは筋金入りの民主主義の国である(ゆえに、マルクスも、この地へ亡命して『資本論』を書いた)。この映画を観れば、いま日本でネットで、あの政治家が気に入らん、この政治家のここが悪いなどと「くっちゃべって」、それで何か活動しているつもりになっている人々は、「なにもしていない」ということがよくわかる。

 まず、あるゲイの青年が、テレビニュースで、サッチャー首相が打ち出した、炭鉱閉鎖の政策に抗議する炭鉱労働者たちのストライキを見て、インスピレーションを得るところから始まる。この青年は、ゲイの権利獲得の活動家である。活動家=Activistという単語は、外国の身分ではよく見られ、国会議員になる前の菅直人氏なども、市川房枝氏を担ぎ出したりして、市民運動の活動家としてずっと活動してきた(年金不正、薬害エイズなどを暴いたのは、すべて氏が中心だった時の民主党である)し、今も活動し続けている(反原発など)ことは、毎日の氏のブログを見ればわかる。これは、氏の属する民主党がいいとか悪いとかの問題とはべつの、個人の生き方の問題である。そういう、個人として、具体的に、世の中のために何ができるかを、田舎町の炭鉱労働者の労働組合と都会のゲイ・レズビアン活動家グループといった、本来なら交わるはずもない集団が「いかに連帯していくか」を「具体的に」描いている。ここには、ゲイという言葉から「期待される」、面白おかしいエピソードも、およそ映画から期待されるまがまがしいドラマもない。ただ30年前にあった実際のことを、「具体的に視覚化しよう」という意志のみがある。

 イギリスは確かに民主主義の国ではあるが、格差社会でもある。貴族はとことん貴族的であるが、庶民は、冬は暖炉の石炭の煙にまみれている。そういう人々が連帯するのは、あたりまえである。こういうことがらは、どうも日本人は学ばず、すぐに表面的な近代化、のち、一億総中流(たぶんに妄想ではあるが)、そしてバブルがきた。本作は、日本人にはまったく欠けているものが描かれている。そこんとこを、考えもしないで「いいの悪いの」いう権利は、「あんた」にはない。

 

 



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。