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『文學界2015年7月号』特集「反知性主義に陥らないための必読書50冊」 ──この特集自体が、反知性主義の証左(笑)(★) [Book]

『文學界2015年7月号』特集「反知性主義に陥らないための必読書50冊」(文藝春秋、2015年6月5日刊)

 

 反知性主義とは、佐藤優に言わせれば、「新しい知識や見識、論理性、他者との関係性などを等身大に見つめる努力をしながら世界を理解していくという作業を拒み、自分に都合が良い物語の殻に籠もる」ことである(『知性とは何か』P16)。それは、今の政権の特徴なのであるが、そういう態度が、いまや、知性があたりまえの世界であった言論界、文学界(←雑誌名ではない(笑))にも及んでいるのが問題である。「大衆作家」角田光代が「リライト」したプルーストなど、その最たるものである。複雑な文体を味わうのではなく、ただたんに物語を読み通せばよしとする。しかも、角田光代のあの独特の、迎合的なステレオタイプの文体を通して(笑)。

 だいたい、『文學界』(←雑誌の名前です(笑))が選んだ「識者」だか「文化人」だか50人に、「反知識主義に陥らないための必読書」を一冊あげてもらう──。この「企画」からして、すでに、「反知性主義」である。なぜなら、書物とは、人に教えられて読むものではなく、一冊でなにかを達成できるものでもない。悩み、探していくようにしてしか、知性は育成されていかない。こういうアンケートになんの疑問も持たずに答えている執筆陣は、すべて失格である(笑)。メンバーを見るかぎり、学者として売れている人もいるし、やっとのことで、大学教授だかにしがみついている売れない文芸評論家もいる。「読書」がシュミのビジネス成功者もいれば、数学カンケイの学者もいる。おおまかにいって「学者」センセイたちである。こういう方々に、しかつめらしく、この本と言われて、それを読んで、果たして、「反知性に陥らない」でいられるだろうか?

 プロの文筆家センセイ方は、ここぞとばかり、自分をりっぱに見せる本を挙げ、そういう文章を書いている(笑)。佐藤優は、どこたら大学教授の肩書きをもった「学者」ではないが、こんな人たちよりよほど勉強しているし、反知性主義に(「陥る」という表現も問題である)対抗すべくがんばっている。こんな「文芸誌」を読むくらいなら、佐藤優の『知性とは何か』(祥伝社新書)を読んだ方が、よほどタメになる。氏が推奨しているのは、柄谷行人とか柳田国男ですけどね。なんでもいいんですよ、論理的に考え抜こうという意志さえあれば。

 

 

 


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