【詩】La vie en rose [詩]
【詩】La vie en rose
年取った女が、
血管とシミの浮き出た左右の手に、
値引きになった惣菜パックを
それぞれ一パックずつ持ち
どっちにしようか、迷っている。
通り過ぎる私の眼がスキャンするのは、
パックのなかの惣菜ではなく
パックそのものの素材の柔い感触。
老婆の手のなかでぐにゃりとへこむ
厚さ0.05㎜ほどのプラスチック
それから、その手のシミの青黒さ。
あんなトシになって、スーパーのセール品惣菜を
選ばねばならない人生。
いつ作られたかわからないその惣菜は、
右手に持ったものも、左手に持ったものも、
いずれ同じ味と栄養価なのだ。
それでも多少の差異が
老婆の脳にわずかな快楽物質を分泌するか。
La vie en rose
外国の、すでに死んでしまった女が歌っている。
Aのおかずか、Bのおかずか。
あなたの生にイミはあったのか。
やがて人間という概念も終わると
これまたすでに死んでいる哲学者が
書き記している。
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