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『シチズンフォー スノーデンの暴露』──プライバシーの侵害は自由の侵害(★★★★★) [映画レビュー]

『シチズンフォー スノーデンの暴露』(ローラ・ポイトラス監督、2014年、原題『CITIZENFOUR』)

 

 これは、ただの内部告発ではない。内部告発というのは、ある企業の従業員が、ある仕事をすることで知り得た企業の秘密(=悪事)を、世間に対して公表することである。その際、その人は、新聞などに「飛び込んで」情報を提供する、というか訴える。

 エドワード・スノーデンのしたことは、もっと精巧である。相手はただの私企業ではない。相手は、自分もその国民である国であり、国家はまたべつの国家と繫がっている。「国民の安全を守るためなら、国民のプライバシーなどは犠牲にしてもいい」と考える、いわばイデオロギーの集合体である。

 

 Yahoo!レビューにあった、「やましいことやってなければ、別にネット環境覗かれても大丈夫、とか思ってしまうバカの見本のような、私」そう、あなたは、バカの見本です。しかし、そういうイデオロギーの総体は、こういうバカをあてにしている。国民の大多数がこういうバカであることを望み、バカであるように仕向けてもいる。本作のなかで、スノーデンと同じような機密を扱う起業家だったかの青年が言う、「プライバシーの侵害は自由の侵害なのである」。まさに、この点が問題だと思われる。

 

 私は、オリバー・ストーンの『スノーデン』を見たあと、Amazonビデオのレンタルで本作を見た。オリバー・ストーン作は、スノーデンという個人の内面に立ち入り、それをドラマの中心にしている。しかし、それこそ、スノーデン本人が、本作で避けてほしいと望んだことである。なぜなら、「個人に関わってしまうと、焦点がズレてしまう恐れがある」。スノーデンという、聡明な青年は、この暴露を、誰に対して発信するか、ファイルの渡し方、その後の行動、政府の反応など、すべて考慮に入れて行動している。彼が「駆け込んだ(=コンタクトした)」先は、踏み込んだドキュメンタリーですでに監視を受けた経験のある、ローラ・ポイトラス。そして彼女は、英国紙『ガーディアン』の記者、グレン・グリーンウォルドと繫がっていて、あるホテルの一室で行われたインタビューのすべては、グリーンウォルドが担当する。『ガーディアン』紙といえば、反骨の特ダネを多くものしているので、私もFacebookではニュースラインでチェックしている。

 

 彼らがいかに「効果的に」、米国の全国民対象のプライバシー侵害を、世間に告発するかが、本作の中心である。スノーデンは、ストーン監督のもとで、彼を演じた、ジョセフ・ゴードン・レーヴィットにまさるとも劣らない美青年であり、低い声で理性的に話す話し方も魅力的である。

 オリバー・ストーン作は、ほぼ本ドキュメンタリーをエンターテイメントとしてなぞっている感じだが、まあ、「さらに人々に事態をアピールする」ためなら、今上映される意味もあるだろう。

 

 「テロとの戦い」を理由に、世界中の人々が、政府に騙されないことを祈るのみだ。

 

 

 

 


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