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朝吹亮二著『密室論』 [Book]

朝吹亮二著『密室論』(2017年7月、七月堂刊)

 

1987年から1989年の間に15回に分けて書き継がれた「一篇の長編詩」の復刊である/94ページにわたり行替えのない言葉のつらなりは400字詰め原稿用紙にして110枚程度と思われる。行替えはあるが最初から最後まで切れ目のない小説としてオーストリアの作家トマス・ベルンハルトの作品を思わせるが本作はスラッシュのようなものでたまに区切られているがその区切れもあるページまでいくとまったくなくなってくるがまた現れる/「ではなかった」で始まり「か」で終わる/一応/野村キワオのキワどいエロものよりよほどエロスに関してとことんまで追求しているように思われる/どこを切ってもエロスという血が噴き出し密室をいっぱいにする/その密室はブラックホールなのかどうかだとしたら光も出ることはできない/その絶望の闇のなかで言葉だけがアマテラスなのである/「火の惑星がいきかうおもい放物線で脚がひらかれてゆくふつふつと粥が煮られてゆく脚のあいだのちいさくておおきな突起すっぱくてあまい突起やわらかくてかたい突起それは小骨ではない小骨ではないけれど骨のうえの紅スズメだ紅スズメの木の実だ殻のむけた胡桃だ小骨の女はしなやかに欲情をためこむ水をたたえる鎖骨しずかな海の肋骨ふきあふれ背骨あくまでも硬い恥骨あくまでもうすい恥骨あからさまな視線をためこんで小骨はしなやかに湾曲する沈没した海賊船の竜骨」延々続いていって切りがない(笑)/しかし/リズムはすばらしいスピード感もよい/この詩は1989年7月をもって終わるが同年末私は文芸誌『すばる』に「デビュー作「男はそれをがまんできない」を書くことになる/という「我田引水」になってしまった(笑)/そう/この方とは『現代詩手帖』の「新人特集」でごいっしょしていたのだった/30年後こんなふうに遭遇するとはね/これは「復刊」ではあるが2017年の傑作である/と/記しておかう/もしかしたら『すばる』に発表した拙作4作も傑作かもしれない復刊されないかなあ(笑)/あ/カルヴィーノの掌編「モンテクリスト伯」という作品もちょい思い出した/本詩集を読めば行替えとは反動であるなどという考えも思い浮かぶ/一滴の冬/あ/本書もまたAmazonといふ「三途の川」では扱っておらず(今は扱っているようだが「品切れ中」(苦笑))e-本で購入しました


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