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『小野寺の弟、小野寺の姉』──片桐はいり賛江!(★★★★★) [映画レビュー]

『小野寺の弟、小野寺の姉』(西田征史監督 2014年)

 

  昔は、テレビドラマでもあった、倉本聰や向田邦子脚本の、ウィットに富んだ端整な人情ドラマ、そんな絶滅しつつあるようなドラマを彷彿とさせる。しかし、ただひとつ違うのは、片桐はいりという俳優がそこにいるかいないかである。この俳優は、日本では、樹木希林と双璧の、日本が誇るすばらしい女優である。彼女がセリフを言えば、それが舞台でも(現に本作は舞台作でもあり、片桐が主演しているようであるが)、映画でも、いつまでも「ひとりで思いだし笑い」が可能となる。たとえば、「風水的にマストなのよ〜」と言うセリフにも、どこか批評が混じっておかしく、日常でもついマネしてしまう(笑)。決して、「地(じ)」が滲み出さない、稀有な役者である。

 

  彼女の舞台も、生身(!)も見たが、本来の彼女は長身で物静かな存在で、そこにいても、決して目立つことはない(かなり昔、舞台を見に行って、二列前に座っていた)。出自も、ほんとうは深窓の令嬢だと聞く。しかし、いま、年齢を見てびっくりである。弟役の、向井理が、実年齢とほぼ同じ33歳を演じているので、姉の「より子、40歳」も、同じくらいかと思ったら、すでに51歳である。大したもんだ! そういえば、当方もかなり前から見ているので、そのくらいになるのか。

 

  本作は、脚本も、すばらしい。その脚本家、西田征史の、初監督作品である。より子が勤める眼鏡屋の夫婦(とくに「奧さん」の方の「まったり感」)、その店に来るメーカーの営業で、より子があこがれる相手、より子が病院で出会う同級生、弟進の友だちで一人芝居をやり続ける演劇青年など、「現実にもあるある」の人物たちがきめ細かに配され、物語を盛りたてる。ハリウッドのハッピーエンドも、芸術派の悲劇も、ここにはカンケイない。そんな日本が誇る、リアリズムでありながら、どこか文学的な作品になっている。

 

 

 

 


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