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『マダム・マロリーと魔法のスパイス』──A・R・ラフマーンの音楽が洗練を象徴(★★★★★) [映画レビュー]

『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(ラッセ・ハルストレム監督、2014年)


 


 映画ではしきりに、「フランス女は……」と言われているヘレン・ミレンであるが、彼女のしゃべるフランス語は外国人風だし、なにかと言えば英語で説明させるところをみると、もしかしたら、「フランス人と結婚したイギリス女」かもしれない。どう見ても、彼女のきりりとした品位は、フランス女には出せない(笑)。


 今、日本人で最高の料理研究家と私が思うひとりに、土井善晴がいる。この人はもともと和食の人だが、若い時は、イタリア、フランスで修行して、そして、今は、「今の時代に日本人がほんとうに納得できる料理」を提案し続けている。本作を見たとき、すぐに、この土井氏を思った。本作は、あくまでインド人の側に立ち、フランス料理を評価している点で、ダニー・ボイルの『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)を彷彿とさせた。しかし、あれからすでに6年も経っているので、インドの「表現のされ方」も変わっている。その昔、『インドへの道』には、まだまだ、アジアを見下げた偏見があった。今やインドは、IT産業立国であるが、料理にも鉱脈が眠ることを、いち早くこの映画は表現している。インドの最もすばらしいもの、それは、「スパイス」である。一方、旧大陸、ヨーロッパが誇るもの、それは、エレガントの代表、「マダム」である。ゆえに、この題名は、原題『The Hundred-foot journey』(『100フィートの旅、約3キロの旅』)は、なんのこっちゃわからない。まあ彼らの周囲、幸福の青い鳥は、すぐ近くにあったということなのだろう)よりも内容によく沿っていると思う。なにかが足りないという意見があるが、スパイスは入れすぎたら元も子もなくなる。過ぎたるは及ばざるがごとし。その点をこの映画はよく心得ている。そして、なにより、インドの世界的音楽家、A・R・ラフマーンが、音楽を担当していることは、この映画を、ただの料理映画でも異文化交流映画でもない、もっと洗練され、もっと現代的なものに押し上げているのは言うまでもない。


 『スラムドッグ』や『127時間』のように、踊り出したくなるエンディングである。


 


(私事で恐縮であるが、2009年のクリスマスに、パリの高級フレンチ・レストラン『カフェ・ド・ラ・ペ』で、ディナーを食べたが、どうってことなかった。その時は、確か、星がついていたような気がするが、今見たら、星がとれていた(笑))


 


 


(写真は、ホテル「インターコンチネンタル・パリ・ルグラン」側のレストラン『カフェ・ド・ラ・ペ』の入り口)

 

IMG_1750.JPG

 

 


 


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