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『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』──松尾スズキの毒が生きるとき(★★★★★) [映画レビュー]

『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』(松尾スズキ監督・脚本・出演、2015年)

 

 「大人計画」には2人の演出家兼脚本家がいて、1人は松尾、もう1人は宮藤官九郎で、役者だったクドカンの脚本家としての才能を見出したのは松尾だ。ふたりがそれぞれ、脚本+演出する舞台、映画を観てきたが、クドカンの方がキレがいい。だからNHKの仕事が来たのか。しかし、今回、松尾の映画を見て、モラリストぶりたい人間ばかりの今の世の中、松尾スズキの毒が必要かもな〜と思った。

 お金アレルギーの主人公「タケ」(と、村人に呼ばれるようになる)が、高齢化し、崩壊寸前の村に住み着くことになる。東京の銀行で融資課にいた頃、お金を「酸素のように」吸い取られ、崩壊していった人々を何人も見て恐怖症になってしまった。お金を使うことも見ることもできなくなってしまったタケは、辺鄙な村の「ボロ屋」と田んぼを買い、自給自足の生活を始めようとする。クセモノ揃いの村人たちとてんやわんやがあって、やがて村になじんでいく……みたいな、今の日本の若手監督が作っている、いろいろギャグがありながらも、ちょっとしんみりで……みたいな映画を「自動的に想像して」客席に座った。松尾スズキをすっかり忘れていたのである。映画は、オフビートに展開していく。やがて思っていた方向と違う方向に来ているのに気づく。主人公もただの純な青年ではない。なんでもクレジットを見ていたら、文化庁がどーたらこーたらと書いてあった。そうですか……。だったら、素晴らしい(笑)!

 

 本作にはかなりの毒が込められています。予備知識なく見た方、アテられないように、怒らないように(笑)。しっかし……相変わらずの、「大人計画」の面々である。カメレオン・オバサン、伊勢志摩。イケメンと紙一重デブの皆川猿時。若くてもバーサンの宍戸美和公。どこにでも転がっていそうな不良、荒川良々。そして、妙に「松たか子のダンナ」が似合う(笑)阿部サダヲ。……に加えて、パートのオバチャンにして革ジャンのオートバイライダーという、よくワカンナイキャラの片桐はいり。いったいどーなってんですか? あげくは、ポール・トーマス・アンダーソン『マグノリア』のアレをパクって。結局、松尾スズキは犯罪がおすき。クドカンに比べて、陰に沈む。今回は、それが、今の資本主義社会のいきつくところを、奇しくも(?)描ききって、偶然かもしれないけど、性交……いや、成功しちゃったんであります。しっかし、やはり、あの松田龍平、スキモノが顔に出ているというか、じっと見つめていると、顔の奥から松田優作が浮かび上がってくるようで思わず合掌であった(笑)。



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