SSブログ

【冒頭翻訳劇場(柴田元幸氏にならって)】ジェームズ・ジョイス 『ユリシーズ』 [文学]

【冒頭翻訳劇場(柴田元幸氏にならって)】


 


 ジェームズ・ジョイス


『ユリシーズ』


 


 Ⅰ


 


 堂々として、まるまる太ったバック・マリガンが階段の天辺から降りてきた、泡のたった石鹸液の入ったボウルを持って、そのボウルの上に、鏡とカミソリを十字に置いて。黄色い、ベルトを結んでないドレッシング・ガウンが、朝の柔らかな風を受けてふうわりと彼の背後で止まっていた。彼はボウルを高く掲げ、抑揚をつけて言った──。


「ワレハ神々ノ祭壇ニ赴カン」


 立ち止まり、螺旋階段の暗闇をじっと見下ろし、粗野な声で呼んだ──。


「上がって来いよ、キンチ。上がって来い、このバチ当たりのイエズス野郎」


 


*****


 


 James Joyce  "Ulysses"


 


  



Stately, plump Buck Mulligan came from the stairhead, bearing a bowl of lather on which a mirror and a razor lay crossed. A yellow dressing-gown, ungirdled, was sustained gently behind him by the mild morning air. He held the bowl aloft and intoned :


 _ Introibo ad altare Dei.


 Halted, he peered down the dark winding stairs and called up coarsely.


 _ Come up, Kinch. Come up, you fearful jesuit.

 

 


 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。