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【詩】「くろ」 [詩]

「くろ」


 


そのむかし、くろという名の犬を飼っていた


父が遠州の山から拾ってきた、すでに成犬の黒い犬だった


山犬の血が入っているということで、


誰にもなつかなかった


家のものにさえ噛みついた


当時は、犬を家の中で飼うなどという発想はなかったので、


庭の犬小屋か物置かに繋がれていたが


道行く人にも吠えかかり


なかでも、夫婦で銭湯に通う


0さんは快く思っていなかった


というか、ときどき鶏の骨などを、くろのエサボールに


入れていった


鶏の骨は、犬の体内で粉々に割れるから


与えてはいけないと聞いていた


そのせいではないが、ある朝くろは、


吐いて死んだ


あまりに突然


その時私は、友だちとの約束があったので、


駅に向かった


母が経をあげ、くろの始末をした


何匹も犬を飼ったが、死ぬと


たいていどこかへ埋めにいった


いつも父母がしていたので、


私は見たことはない。


たぶん、川の土手あたりだ。


そんなふうで、くろにはあまり親しみを


感じなかった。


それでも私は、朝日を浴びながら駅に向かいながら、


泣いた。


泣いて、「犬論」という詩を書いた。


それをパクったやつがいた。


そしてそれは失われしまった。


ただ記憶している行は、


「犬よ、われわれだって、生き続けるわけでない」

 

 



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