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『トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲 (朝日新書) 』──「勝てば官軍、後出しジャンケン」本(★) [Book]

『トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲 (朝日新書) 』──「勝てば官軍、後出しジャンケン」本(★)

 

 

『トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲 (朝日新書) 』( エマニュエル・トッド 、佐藤優 著、2016年12月26日、朝日新聞出版刊)

 

 エマニュエル・トッドは、フランスの「私はチャーリー」現象を、専門の統計学から分析し、フランスでは少数派の、期待の学者だったが、本書で完全に失望した。主張は、おもに「後出しジャンケン」。トランプが大統領選に勝った「直後」、ほらみろ、トランプは、アメリカ最下層の意見を代表している、というのが主張である。

 

 一方(そう、これは両者の対談ではなく、「(おもに)インタビューを)つなぎあわせただけ」の本なのである。しかも、ページ数もかなり少ない。しかも、従来の朝日新書に、目立つ真っ赤な衣装まで着せている(笑))、今や「インテリジェンスの大家」(笑)佐藤優、この人の本もけっこうたくさん買って、ふむふむそうかそうかと信じた(笑)。確かに勉強かであり、かつては外交官(佐藤氏にかかると、「スパイ」みたいだが(笑))として赴任していたロシア情勢には、詳しい……ような態度を取っている。だが、たとえば、『ファイナンシャル・タイムズ』の前モスクワ支局長、チャールズ・クローヴァー氏が出版した、『ユーラシアニズム』のような本など書けまい。せいぜい、それをネタにして、水増し本を書く程度であろう。

 

 本書が浅薄なのは、アメリカ大統領選を、「当たるか当たらないか」の、まるで下手な占い師の実力比べのような切り口で扱っている点だ。本書によれば、トッドは、完全にトランプ大統領を断言し、佐藤優は、断言まではしないが、可能性としては残していた、そして、自分はさておき、副島孝彦氏は、断言し、当てたと、尊敬のまなざしなのである。

 

 当たる、当たらない、で言えば、確立は2分の1。どちらかを強く主張し、結果としてその通りになれば、「それみろ!」である。そういう世界か。むしろ、アメリカの、大部分の予想をはずした(というより、望まなかった)知識人たちのように、「やはりトランプはおかしい」といい続けることが誠実な態度とも思える。

 

 本書は、「緊急出版」はいいが、ほんとうに、トランプ当選「直後」なので、現在ただいま(2017年1月29日)の時点まで、十分予想できていない。

 まず、トッドが主張する、「トランプは、アメリカの最下層の支持で当選した」であるが、すでに、プーチンがサイバー攻撃によって、アメリカ大統領選にかかわったことが、わかっている。トッドはこの点についてはいっさい「予想していない」。

 

 また、二人(トッド、佐藤氏)とも、トランプはただ言動が過激だけで、実際は、誠実な庶民の味方であるかのような表現をほのめかしている。しかし、今、トランプは、法律としては高い遵守が求められる、エグゼクティブ・オーダー(大統領命令)によって、選挙前の主張通り、メキシコとの間に壁を築こうとしているし、低所得者をも守った、オバマ・ケアをも取りやめにしようとしている。ほかにも、独善的なことをどんどん進めている。そして、クリントンがいかに金まみれのワルモノかも、ほのめかしている。

 

 少なくとも、佐藤優氏は、リベラルではなかったのか? いったい、どうなっているんだ? この日和見は。

 

 

 


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