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The Golden Bough of Turner 2018 [絵画]

The Golden Bough of Turner 2018
(アクリル)

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『オンリー・ザ・ブレイブ 』──合掌(★★★★★) [映画レビュー]

『オンリー・ザ・ブレイブ』(ジョセフ・コシンスキー監督、2017年、原題『ONLY THE BRAVE』)

 

 大昔から、森林が存在するところ、山火事は存在した。湿度が極端に低い地域ではなおさらである。昔は、その山火事が、生い茂る木々を淘汰することにもなったと思う。しかし、今、自然との共存と人間の居住区域を考えると、山火事=森林火災は大きな問題である。そこには、本作のような、普通の生活からはまったく気づかない人々の地味な仕事が存在する。

 

 この森林火災の消防人たちは、体力はもちろんのこと、風の動きなどの気象も読めなくてはいけないし、どのように防ぐかの判断力も必要とされる。しかし、そこに集まって消火(水をまいたりするのではなく、防火帯を掘って作ったり、逆に火を放って燃えるものを減らすなどの方法があり、飛行機で水や消化剤をまいていくのは、べつの仕事である)の仕事にあたる人々は、ある程度の犠牲(家族とのんびり過ごす時間が少ないなど)を払わねばならず、そこにはさまざまな個人的事情も入り込む。

 

 『セッション』で、しごき抜かれ一流ドラマーへと育っていく学生を、27歳で演じた、マイルズ・テラーが、30歳になっても、やはり学生を演じ(笑)、今度は、ガールフレンドに赤ちゃんができ、それをきっかけにこの仕事に入り、立ち直っていくという姿が描かれるとあらば、ゼッタイに見逃せない。しかも、キャストは、信頼感のある中年男の魅力ではピカイチのジョシュ・ブローリン、アメリカの「ジーサン樹木希林」といった境地に達している、ジェフ・ブリッジス、とくれば、傑作に決まっている。さらに、年を取ってもかえって美しさに磨きがかかった感のあるジェニファー・コネリー、なつかしのアンディ・マクドウェルが、苛酷な映画に、やさしさを添えている。

 

 それだけのキャストに対抗する、森林を焼き尽くそうとする火が非情にも美しい。

 火の足は速く、強大である。太古からそうだった。なにものも逆らえない。実際にあった話なので、「結末」はわかっているはずだが、私はそれをまったく意識せずに観たので、森林消火隊各人が寝袋のように被って地面に伏せ、通過していく火をやり過ごす最後の手段の防火袋で生き残れるものと思っていた──。

 

 そして奇跡的というより、おそらく隊長(ブローリン)の判断によって、見張り役を指示された、ブランドン・マクドナウこと、マイルズ・テラーがただひとり生き残り、犠牲になった仲間たちの生の意味を証すことになるのは、ふたたび「セッション」を生き延びるヒーローを思わせる。

 エンドロールで、役を演じた俳優の写真が「隊員本人」の写真に変わり、名前と当時の年齢が映されるが、彼らの多くが二十代という若さに胸が痛まない人はいないだろう。

 

本レビューのタイトルを「合掌」したが、隊長のマーシュ(ブローリン)は、常に数珠を携えている仏教徒であることがさりげなく示される場面がある。

 

 


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