『探偵はBARにいる3 』──注意! エンドロール後にオチあり(★★★★★) [映画レビュー]
『探偵はBARにいる3』(吉田照幸監督、2017年)
なんかクレジットが流れ始めると、「もう映画は終わった」とばかり早々に席をたって出ていってしまう人がいる。そういうのを見ると、映画愛がないね、と感じる。私は明かりがつくまでは座っている主義。なので、こういう人間には、なにかといいことがある。まず第一、知らない間に床に落としていたものが見つかるし、忘れ物も少ないし、第二は、ときどき、「ものすごくオモシロイオチ」が付いている。たいていは、「おまけ」みたいなものかも知れないが、今回は、「おまけ以上」の、本編で、サイコーにおもしろいオチだった。
それをここで明かしてしまおうと思うので、楽しみな人は要注意で、以下、読まないように──。
ミステリーとしても、人間ドラマとしても、クサいというか陳腐である。しかし、どうせ、新宿歌舞伎町の、はぐれエリート、「新宿鮫」には勝てっこない。「探偵」とだけ呼ばれる探偵(大泉洋)と、助っ人の、北海道大学で酪農の研究をしている「高田」(松田龍平)のコンビがかなり魅力的である。ありそうで、なかなかないキャラである。「探偵」は、運転免許もない飲んだくれで、高田は、ぼーっとしたしゃべり方ながら、北海道大学空手部で秘かに訓練を積む、格闘と運転担当である。その車というのが、いまどきゴミ捨て場にもないような、錆び錆びのフォルクスワーゲン(に見えたが)。お約束の、ヤクザとの格闘には、わりあいたっぷりのシーンがとってあって、高田はもちろんのこと、「探偵」もわりあい強いのである。むしろこれだけが二人の「探偵業」を支えている。
今回、高田がニュージーランドへ、酪農の勉強へ行くというのが、ナナメぐらいの糸になっていて、事件解決後は、「探偵」も餞別を渡す。「いいよ」と遠慮する高田。「一度出したもの、引っ込められるか」という「探偵」。数回の押し問答ののち、受け取る高田。
いつもの路地で左右に別れ、「さよなら」。
……が、エンドロール終わって……
牛小屋の前で帚で掃いている高田が映る。
「なんだ、ニュージーランドへ酪農の勉強に行ったんじゃなかったのか?」とそこへ現れる「探偵」。さらに、「まさか隣り町にいるとは……。札幌から快速で二十分じゃないか」
高田「ニュージーランドの酪農の勉強はしてるよ」
そこへ、牛を連れた大男のガイジンが横切っていく。
高田「あいつ、二メートルあるんだ」
探偵「餞別返せ!」
高田「使っちゃって、もうないよ」
探偵「何に使ったんだ?!}
高田「競馬」
探偵「このやろー!警察呼ぶぞ!」
ほかに、オカマ役の篠井英介がシーン少なめだけど、魅せる!し、 フランキー・リリーも、悪役なれど、いつもの「丸顔」よりはすっきり細目顔で、真のワルを演じている。北川景子大活躍、なれど、この「美人顔」には違和感あり。前田敦子、もう「地」としかいいようがないが、今回、その「大根ぶり」を「利用した」と見た。
タイトルは、ススキノの便利屋「俺」シリーズの一冊から取ってあるが、なかなかよい。
ストーリー陳腐ながら、きっちりハードボイルドしている。そして、札幌の生活感。縦糸ストーリーは、誰でも書いているだろうから省略(笑)。