【詩】「おそらのおほしさま」 [詩]
「おそらのおほしさま」
おそらのおほしさまがじっとぼくをみている。
それは、すいせいかきんせいか
かせいか、もくせいか、どせいか、
えうろぱか、えんけらどすか、
てんのうせいか、かいおうせいか、
めいおうせいか、
オールトの雲、ここで太陽系を抜け、その向こうにあるおほしさまか
ケンタウルス座プロキシマ星、ケンタウルス座α星Bか、ケンタウルス座α星Aか、それとも、
プレアデス星団のうちのどれかのおほしさまか、
オリオン座の一等星ベテルギウスか
まだ六四〇光年しか離れていない。
馬頭星雲、オリオン大星雲、リング星雲、
はくちょう座X-1、かに星雲、
オメガ星団、いて座Aスター……そして、天の川銀河の外へ出て、
大マゼラン雲と小マゼラン雲が見ているのは、
フェルディナンド・マゼランだ。もっと先、
アンドロメダ銀河。
五九〇〇万光年先、おとめ座銀河団。
同じく、巨大楕円銀河M87。
六八〇〇万光年先、触角銀河。
さらに数十億光年行けば、そこは、望遠鏡で観測できる限界。
石鹸の泡のように盛り上がる星々。あ〜♪砕け散る〜♪なんて、
歌っている場合じゃない。なぜなら、
百三十八億光年で宇宙は終わっている、というか、
はじまっている。それより過去はなし。
球体、重力、方位、元素、これらはすべて、人間が考えだしたもの。
そして、べつの考えも存在するだろう。
やがて宇宙も終わるだろうが、それよりも、それこそ「天文学的速さ」で、人間が終わる。そのとき、時間も終わる。
終わりという概念も終わり、それでも、
おそらのおほしさまはじっとぼくをみている。