SSブログ

『プーと大人になった僕』──「ぼくたちにはプーが必要なんだ!」(★★★★★) [映画レビュー]

『プーと大人になった僕』(マーク・フォースター監督、2018年、原題『CHRISTOPHER ROBIN』)

 

 イギリスには、有名なクマが2匹いる。パディントンとプーだ。パディントンは、1958年代に発表された児童文学作品で、プーは、1926年にA.A.ミルンによって発表された「児童小説」だ。設定ではペルーからやってきて、駅の名前がついているパディントンよりも、百エーカーの森に住む、プーの方が、仲間たちも、日常生活も、「きめ台詞」も、魅力的だ。しかしながら、イギリス政府は、どうも、はしこいパディントンを「お国の代表」にしたいみたいだ。というか、ロンドンの象徴? ロンドンみやげのクマは、たいていパディントンだ。これは、プーの作家がスコットランド出身で、どうもプーの生息地はスコットランドにあるからではないかと思われる。あるいは、早くからディズニーによって買い取られたキャラであったせいか。そのディズニーがはじめて、「実写」を作った。クリストファー・ロビンは、大人になって、会社員としてこき使われているが、この役は、47歳になっても少年の顔をした、ユアン・マクレガー以外、考えられない。もしかしたら、ユアンあっての「プー実写」かもしれない。

 プーをよく見れば、どこといって特徴のない「ただのクマのぬいぐるみ」で、同じように年取ったプーは、オッサンの声だ(笑)。

 一応、良家の子息であったロビンは、当時の習慣にしたがって、学校の寄宿舎に送られる。いちばん多感な時に、クマのぬいぐるみと別れる。それは、幼年期の終わり。

 しかし、産業資本社会に生きる人間は癒しが必要で、そこで、ふたたび、プーが現れる。プーの設定は、「あまり頭がよくないクマ」。この設定が自然ですばらしい。ゆえに、変な理窟をこね、それがわれわれの心に、忘れていた幼年時代を思い出させる、いや、出現させる。

 

 ロビン「100歳になってもずっときみのことを思ってるよ」

 プー「100歳かあ……ぼくはいくつになってるんだろー?」

 ロビン「99歳だよ」

 プー「99歳かあ……」

 

 なんとはない台詞にウィットが滲む。現実と非現実の接点を描くのがテーマといえる、マーク・フォスター監督は、生き生きとした森やロンドンの街の風景のなかに、「ただのぬいぐるみ」を配し、すばらしい癒しを観客に贈ってくれた。

 


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。